11月5日。
商船三井担当者殿の自宅に電話。
続いてサントドミンゴ代理店と電話する。
サントドミンゴの電話でリオンのレジスターが整い、
2日前東京、サントス、サンパウロに送られていることを知る。
確認のためサンパウロに電話する。
昼食中でいない。
サントスに電話する。
確かに受け取ってること及びサントスから送還すべくワーク中であることを知る。
送還準備として密航者に新品の服と靴を買い求めるよう依頼される。
後は優秀なサントス代理店に任そう。
.....(経費として代理店からの電話代発生)
......(密航者の服靴購入代、買い物のための交通費経費として発生)
(17) 送還
11月10日 サントス入港。
FEDERAL POLICE に密航2名の身柄を渡す。
......(経費として送還費用カウンテイング開始
........
(解説)
当時は、国際電話をかける携帯電話などなかったことを
知らないと、こうした行為が理解できないと思う。
いずれにしても、代理店の事務所に電話をかけるために出向いた。
出向く際は、まだ、レジスターが出来、送還手続きが開始されて
いるとは、知らなかった。
そのため、市内にある代理店オフイスには、リオンを連れて行った。
リオンにリオンの恋人に電話させ、父親の説得に当たらすためだ。
ただ、リオンはパスポートもなく上陸許可証もない。
港の外に出ることができない。
また、逃げられても困る。
それで、私は、船長の服装を着て、リオンの手と私の手をロープで
つないで外に出た。
船長の肩章は、軍隊で言えば「大尉」に相当する。
権威があるので、ポリスも捕まえないだろうと思ったからだ。

代理店に行って、電話をかけたら、
上記のようにレジスターができ、送還手続きが始まっていることを知る。
リオンを連れて来る必要がなかったのだ。
それはそうとして、レジスターができたことは嬉しかった。
リオンが恋人と話したいと言うので、許可した。
恋人の声を聞いたリオンは、「帰りたい」と言いだした。
無理もない。
代理店のオフイスを出て、商店街に行き、リオンとペドロの服と靴を買った。
私もリオンも上機嫌であった。
タクシーで港に戻った。
ゲートを入ったところをポリスに捕まった。
上陸証明証を見せろと言う。
「ない」と言うと、二人繋がったまま、引っ張っていかれた。
牢屋に入れられ、鍵までかけられた。
私は、慌てなかった。
このポリスは多分新人だ。
外国船の船長というのは偉い、ということを知らない。
私はポリスに大声で怒鳴った。
「ポリスの責任者を連れて来い」
「連れて来たら、お前の無礼さを訴える」
「お前はポリスを辞めることになる」
その恫喝に恐れて、ポリスは牢屋の鍵を開けてくれた。
但し、このことは恥ずかしい(捕まったので)ことなので、
会社の報告書には、書かなかった。
サントスでの送還手続きは、報告書に書いていない。
なぜなら、サントスの代理店が報告するであろうから、
私が特段に報告する必要がないと思ったからだ。
以上で、サントドミンゴからの密航者を終わります。
報告書を転記しながら、若かったなあ、と改めて思いだしました。