ホルムズ海峡でタンカーが被弾しました。
私は少なくとも10回以上航行している現場です。
公表されている情報におかしな点があります。
1、被災海面が正確ではない。
報道ではホルムズ海峡を抜けたオマーン湾ということで、
次のような被災地が記されています。

これは間違いだと思います。
もっとホルムズ海峡に近い処だと思います。
何故ならあとで述べますが、地雷による被災であるからです。
であれば、積荷船舶が必ず通るルート近くに地雷が置かれるからです。
現場を説明するためにペルシャ湾全体を述べます。

ペルシャ湾に出入りする場合、図の東経60度線は重要です。
この線を超えて西に入ると急に空気が熱くなり東に抜けると涼しくなります。
船乗りにとっては、東経60度を超え西に入ると、
「いよいよペルシャ湾」の感じになります。
同時に、この線を超えて西側にいる間は、
ペルシャ湾手当といって給料が10%増しになりました(昔=笑)。
まあ、これは余分の話です。
全体図を見ていて、ついつい思いだしただけです。
本当に紹介したいのは、次の図です。

ホルムズ海峡を航行する場合の国際ルールが決まっています。
ああ、その前に話しておきたいことがあります。
ホルムズ海峡はイランとアラブ首長国連邦の間の海峡と思う人が多くいます。
違います。
イランとオマーンの間の海峡です。
オマーンに飛び地があるからです。
半島はアラブ首長区連邦ですが、その先っちょだけはオマーンなのです。
ですから上の図に書いてある「リトルコイン島」はオマーン国なのです。
島は二つあります。
ですから、リトルコイン島ではなく、
リトルコイン諸島だったかも知れません。
忘れました。
船の方向(北方)から見ると、こんな島です。
さて、国際ルールの話に戻ります。
障害物を左に見る船はできるだけ障害物から離れて航行し、
障害物を右に見る船はできるだけ障害物の近くを航行しなければなりません。
前々図に描いてある矢印のとおりです。
船を攻撃する場合、荷物を積んでいない空のタンカーを攻撃しません。
ペルシャ湾の港で貨物を満載して出てくる船を攻撃します。
その方が効果的だからです(あたりまえですよね)。
積荷を終えた船は、リトルコイン島の近くを航行しなければなりません。
必ずそこを通る訳ですから、地雷の設置場所の選定地になります。
今回も、リトルコイン島の至近に機雷が置かれたと思います。
島の北側至近か東側至近だと思います。
東側であれば、すでにオマーン湾ということになります。
2、砲弾による被弾ではないと思います。
会社側は砲弾といっています。

砲弾であれば、どこからか(他の場所から)撃たれなければなりません。
付近に船がいないので陸上からということになるのでしょう。
でも見て下さい。
船舶の右舷が被災しています。
イラン国ではなくオマーン国の方向からの攻撃になります。

リトルコイン島の方向からです。
ここを通る時、乗組員の目は常時島に向いています。
勿論、前方の海面も見ますが......
島から目が離れることはありません。
でも、砲弾目視の報告がありません。
ということは砲弾ではなく機雷ということです。
機雷だろうと思える他の証拠もあります。
もういちど上の写真を見て下さい。
海面に接した喫水線上が被災しています。
海面にちょっと頭を出すか、
ちょっと海面下にあるかの浮遊機雷による被災です。
浮遊機雷ではなく海底に錘をおろした機雷では船底が被災します。
浮遊機雷であるとのもうひとつの証拠があります。
外国(ロイター)では、こういうことも発表されています。

小さな字のところです。
次のように書いています。
米政府高官はロイターに話した。
イラン軍がタンカーの側面から不発機雷と
みられるものを取り除く作業をしていた。
その写真を撮って保存している。
(追記)
不発弾除去の写真がネット上に流れていますので追記します。
イランは何故に早々と撤去したのだろうか。
不発機雷がチェックされれば「イラン製」とばれるからだろう。
そうでなくとも、そう思われても仕方がない。
ということで、やはり機雷なのです。
機雷といってもいろいろあります。
「磁気機雷」と報道している情報もあります。
船舶は大きな鉄の塊です。
鉄の塊が近づくとと、付近の磁性に変化がおきます。
その変化を受けて爆発する機雷です。
ということは、機雷に当たらなくとも、
その近くを船舶が通るだけで爆発するのです。
危険な機雷ですから、味方船を爆発させてしまう恐れがあります。
ですから、こうした機雷は時限性になっています。
設置してから、1~2時間だけ有効なのです。
ですから、
敵の船舶が近づいてくるのを確認してから設置するのです。
さて、話を変えます。
次の映像の説明です。

エンジンルームが火災になったそうです。
CO2を注入して消化した....の説明です。
エンジンルームが火災になると、エンジンルームには入れません。
でも、ひとり入ろうとしたようですね。
火傷をした乗組員がひとり報告されています。
エンジンルームに入らずにどう消化するか。
火は酸素がないと燃えません。
エンジンルームの酸素をなくするのです。
そのため、エンジンルームの外にCO2ルームという部屋があります。
この部屋には、CO2のボンベがいっぱいあります。
そこで、まずはエンジンルームからの出口をみんな閉めます。
アイアンドアといって、鉄の厚い扉でエンジンルームを密室にします。
その上で、CO2ルームのボンベを全部全開にするのです。
そうするとエンジンルームはCO2が満たされ酸素がなくなって瞬間に消化できます。
ですが、CO2が充満したエンジンルームには人間が入れません。
ということはエンジンが使えないので「航行不能船」になります。
でも航行が不能なだけで、すぐに危険な訳ではありません。
船長はこの時点で船を放棄してはいけません。
エンジンルームが浸水したからといって船は沈みません、
船は、そのように造られています。
が....もういちど被弾したそうです。
しかも、今度は、船の中心です。
積荷のメタノールがいっぱい積まれた場所です。
(白いものは写真の都合で光ったものです)
(雲とか煙とかではありません)

メタノールに引火すれば船は爆発します。
船長は二度目の被弾で乗組員の退船を決断しました。
船を捨てるのを「アバンダンシップ」と言います。
大変な決断だったと思いますが私も同じ措置をとったと思います。
船主と運航者に申し訳ないことですが、人命優先です。
事故のことばかり書きました。
起きてしまったことはしようがありません。
大事なのは誰の指図で機雷がセットされたかということです。
イラン政府の指図とは思えません。
が、イランには国の指示が届かぬ過激分子が多くいます。
そうした輩の仕業ではないでしょうか。
でも、ここが困る処なのです。
イランが核を持つと困るのはこのことです。
イランが持つとサウジアラビアも核を持つでしょう。
それよりももっと困るのは、
イラン経由で過激分子に核が拡散することなのです。
トランプが心配するのは、このことです。
北朝鮮が核を持つことよりもイランが核を持つことが怖いのです。
さて、
安倍総理とハメネイ師との会談が終わりました。
その効果につきいろいろ書かれております。
ハメネイ師は安倍総理に「核保有の意思なし」と伝えました。
イランは政治よりも宗教が強い国です。
ハメネイ師のそうした意見が公表されたということが評価できます。
トランプが安倍に感謝すると前置きしながら言っています。
「少し早すぎたようだ」
そのとおりです。
時間をかせげたこと....
アメリカにとっても国際社会にとっても良いことです。
安倍はそれなりの役を果たしたと評価されるでしょう。
カミさんに質問されたので、その答えを追記します。
カミさんが聞く。
「日本の船と知っていてやったのかしら?」
状況判断したところ、それはありません。
どこの船でも良かったのです。
航走してくる船を見てどこの国の船かわかりません。
パナマ籍船ということは、船尾に表示しているのでわかります。
ですが、その船は、パナマの国の船ではなく、
実際には「日本の船会社の運航」ということは通常はわかりません。
目的をもって調べれば解りますが...
今回は2隻が被災しました。
もう一隻は、フロント・アルテア号という船でした。
船主はノルウエーですが、運航は台湾の精油会社でした。
船に書かれた船籍となると確か「太平洋の島の名」でした。
その船の主たる損得はどこの国に所属するかなんて、
今は、船名を知っただけでは簡単にわかりません。
そういういうことから、
日本の国を狙って爆破したものではないと思います。
なお、今ほどのニュース(CNN)で、
不発機雷は、リムペットマインと呼ばれる機雷で、
船底に付着させ遠隔操作で爆発させるものである。
とも報道されました。
それが本当なら、上記の私の私見、少し異なってきます。
でも、今朝に知り得たデータの中だけで分析して書いた...
ものですから、修正せず書いた当時のままにしておきます。