晩酌解禁の余波がまだまだオレの胸を焦がす。
「ドライブでも行く?」とカミさんを誘ってみた。
一年間、そういうことを言わなかったような気がする。
で、目指したのは、空気の涼しい白山麓の林間コース。
途中に「かんぽの郷」という目新しい温泉宿がある。
プールもあるので、体を冷やすこともできる。
白山麓は「そば」が美味しいので、食べることも楽しみだ。
そんなドライブ、 自宅から小一時間、川沿いに山道を走る。
名物の「ソバ屋」を何軒もやり過ごす。
「かんぽの郷」でも、ソバを食べることができるからだ。
で、「かんぽの郷」に着いたのは、丁度お昼。
早速、レストランへ。
「いらっしゃいませ」と、
蝶ネクタイのボーイさんが迎えてくれる。
なんか変だなあ、と感じつつ席に座ると、「本日はお一人様¥1980円也のバイキングでございます」との言葉。
これにはびっくり、今更出るわけにも行かない。
ソバにありつけなかったカミさんとオレ。
しようがない。
いくつもの皿に山盛りのバイキングを摂ってのヤケクソ喰い。
腹がパンパンになった。 プールにはすぐに入れない。
タタミの間で一旦休憩だ。
その休憩もカミさんに怒られる。 横になった途端、鼾をかきだしたので、周りの人が笑っている、 恥ずかしいので起きろ! というのだ。
周囲を見回すと、確かにみんなオレを見ている。 そして目が合うと目をそらす。
了解、納得、世間は冷たいのだ!
で、世間の視線を逃れ、カミさんとプールへと逃亡した。
温泉とプールは入り口が同じである。
「男湯」に入ったオレ、まず「湯殿」を覗いて見る。
いろいろなシステムの遊び湯が作ってある。
これは、楽しい。 すぐに入浴を決めた。
カミさんがプールでオレを待ってることなんか忘れてお湯を楽しんだのだ。
十分に楽しんでから、プールの方に移る。
プールもなかなか良い。 水流があるので、それに逆らって歩いたり泳いだりすると、結構な運動量になる。 が、その内にプールにだんだんと人が集まり始めた。
例により女性が多い。 昔の女性も今の女性もいる。 そんな女性の中にはげちゃびんのオレが独りでいることの異様さに、だんだんといたたまれなくなってくる。 ど、どうして、カミさんが現れないのだ! 痺れを切らして、監視人に「風呂にいるはずのカミさんをプールに来させて」と頼んでみる。
待つこと10分、現れたカミさんは、もう着替えている。 そして「もう帰ろうよ」と、言う。
プール、そして風呂の順序で楽しんだカミさん。 風呂、そしてプールの順序で渡り歩いたオレ。
要するに”すれちがい夫婦”だった訳である。
せっかくのドライブなのに、ソバもすれ違い、夫婦もすれ違った。
写真は、カミさんに撮ってもらったもの、機嫌よく見せる精一杯の演技中。