迷走する英国の欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット).....
10月の末には絶対に離脱するとジョンソン首相が広言していた。
今日が、その10月末日。
が、ブレグジットが成らなかった。
では、いつになったらブレグジットが成るのか。
今年中にはブレグジットできそうな気配がある。
しかも、EUとの「合意あり」のブレグジットができそうだ。
もしそうなれば、現在、世界の一大関心事である米中戦争.....
にも少なからず影響がありそうだ。
今日は、その辺のことを語ってみたい。
1、英国の議会制度
イギリスの行政を司るのは「下院」と「上院」と「女王」の三つあるが、女王は承認する権限だけで直接に行政に関わることはない。一方、下院と上院の関係だが上院は下院の決めたものをある期間ストップさせる権限があるだけで根本的に中身を決める権限はない。さらに上院議員は選挙がある訳ではなく首相が選任し女王が任命して決まる。だからイギリスの場合、行政は全て「下院」で決まると言っても過言ではない。なお首相の決まり方だが与党第一党の議員の中から選ばれる。したがって首相と言ってもそれほど大きな権限はない。例えば、日本の首相は衆議院の解散権があるがイギリスの首相はそんな解散権もない。解散するにも議会の同意が必要だ。ということで、イギリスの議会を理解するには「下院が全て」ということをまず覚えておいていただきたい。
2、英国の議員制度
世界の先進国の多くがそうであるが、国会議員の給料はそれほど高くない。なぜなら国会議員と言うのは名誉職であってボランティア即ち手弁当で国のために尽くすという考え方があるからだ。ちなみに各国の国会議員の給料を比較してみる。まずは日本だが公称2200万円と言われているがそれは嘘だ。手当やボーナスを入れると4400万円になる。外国の議員の場合、手当と必要経費しか認められないケースが多いので、日本の議員がいくらもらっているかと言えば4400万円というべきだ。ということで日本の4400万円に対して英国の議員はいくらかというと970万円である。同じく米国は1570万円、ドイツは1130万円、カナダは1260万円、お隣の韓国は800万円である。何故に日本の国会議員はこれほどに給料が高いのか。国会議員に言わせば、地元との付き合いで多額のお金が出てゆくので手取り額としては1000万円しかもらっていない感がある、なんていう。私は日本の悪いところはここにあると思う。国会議員が余りにも多くの給料をもらうことが岩盤規制を作ることになっている。諸外国がそうであるように、国を良くするための政治は心高き者のボランティアであるべきで、選挙というのは立候補する者の「心の高さ」を選ぶ制度であるべきだ。完全とは言えないがイギリスではそうした雰囲気で選挙が行われる。それに比べ日本は全くそうした雰囲気がない。私利私欲の選挙だ。残念だ。
3、ブレグジットに関する英国民の関心
現在、イギリス人はどんなことに関心を寄せているか。つぎのグラフを見て頂きたい。黄色の線がブレグジットだ。去年の中ごろから重大な国民の関心事になっている。ちなみに濃緑のMHSは「国民保健サービス」で、茶色は「犯罪」、紫は「経済」、緑は「移民」である。
現在、イギリス国民は、ブレグジット問題を早く決着して欲しいと切に願っているのが読み取れる。
4、欧州連合(EU)にとってのイギリスのブレグジット
英国のブレグジットが余りにもごたごたしているのでEUも嫌気がさしてきた感がある。英国ともっとも貿易が多いEUの国はドイツである。ドイツはイギリスとの貿易で儲けている。儲けてはいるがそのドイツにしてもドイツ銀行の始末など国内がザアザワしていてイギリスのブレグジットにはかまっておれなくなってきた。ドイツに代わってEUをけん引するフランスにしても自国の経済を好転させるためマクロンとしては自分の理念の反対の減税を打ちたてたばかりだ。国内事情がイギリスにかまっておれない状況にある。さらにEU本部(ブラッセル)もイギリスのジョンソン首相のなんとしてもブレグジットを成し遂げるという信念に全面的反対できない状況にある。そこで出たのが今回の決定。ブレグジットの期限延長を3ヶ月認め、来年の1月下旬にする。但し、その前でもブレグジットできる。その場合は条件がある。その条件だがイギリスが総選挙をすること.....というのが今回の決定だ。
5、イギリスの総選挙が決定される。
ということで、ブレグジットを為すには、総選挙をやらねばならない。総選挙ということは議会解散である。議会解散には3分の2の賛成票が必要だ。当初、その3分の2を得るのは難しいとと考えられていた。それが蓋を開けてみると、賛成438票、反対20票の賛成多数で総選挙が決まった。何故にそうなったか。反対票を入れるはずの労働党が賛成に廻ったからだ。何故に労働党が賛成に廻ったかであるが、このまま総選挙になってブレグジットが決まっても「EUの合意の中でのブレグジット」であって、恐れていた「合意なきブレグジット」でないからだ。さて、ということで、イギリス議会は11月16日に解散し、12月12日に総選挙が決まった。
6、総選挙ではどこが勝利するか。
イギリスの政党であるが、今年の春はブレグジット派が大躍進した。ブレグジット党は、何がなんでもブレグジットする、EUとの合意なぞ必要ない、という考え方の党である。しかし、最近になってブレグジット党が人気が落ちてきている。その代わりに一時低迷していた保守党が伸びてきた。ジョンソンは意外に人気があるのだろうか。今月の各党の支持率は次のとおりだ。
保守党だけでは過半数に満たないが、大きく伸びているのだ。このまま12月まで勢いが維持できれば保守党が勝つと思われる(油断できないという報もあるが....)。保守党が勝てばジョンソンはすぐにブレグジットの手続きにとりかかる。しかも「EUとの合意の元」のブレグジットだ。ということであれば今年の12月中にブレグジットが実現する可能性もある。
7、12月にブレグジットが実現すると....
ブレグジットが実現すると、欧州との無関税自由貿易はなくなる。その代わりEUに断ることなく自由に各国と貿易協定を結ぶことができる。そんなイギリスが最初に交渉する相手はアメリカだ。トランプも「オレは待ってるぜ」と既にラブコールしている。イギリスが次に求める相手は、いわずと知れた「Five Eyes」だ。「Five Eyes」とは、UKUSA協定とも言われる。イギリス植民地を発祥とするアングロサクソン連盟だ。コモンウエルスとも言われるが、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージ―ランドの国々だ。これらの国は貿易だけでなく秘密事項を含めた安保協定も結んでいる。与しやすい国々だ。イギリスが「Five Eyes」の国々と自由に貿易協定を結ぶということは米国にとっても大きなことだ。何が大きいかというと、米中戦争が激しくなる中、中国の包囲網が強くなるということだ。さらに、例えば香港問題は宗主国として米国以上に英国は直接に中国に意見できる場面が来るであろう。その場合EUの各国に忖度することなくそれができるということだ。(余談だが....イギリスさんよ。ブレグジットが無事できれば日本の主導する「TPP11」にも是非に加入して下さいネ)
8、ということで、米中戦争
このところ、アメリカは中国に対して以前より増してダイレクトに非難している。大阪のG20の前に演説する予定だったぺンス副大統領の演説....延び延びになり先日行われた。その内容は痛烈だった。以前の演説以上に中国に牙を剥きだして酷評している。
チベットやウイグルなどの人権迫害から軍事的な世界制覇の野望にまで言及し、日本の尖閣諸島への進出まで指摘している。
最近のアメリカの動き....先日の国連会議で北朝鮮の制裁決議についてアメリカは賛成しなかった。これを見て、私は思う。今、アメリカは朝鮮半島について、北朝鮮は静観、韓国は見放しているのではなかろうか。半島情勢も含め諸悪の根源は中国であると対中国敵視一本に絞ったのではなかろうか。中国を潰せば、半島はどうにでもなると思ったのではなかろうか。私はそう見ている。それが証拠に対中国政策が厳しい。例えば台湾を守る法律を既に通している。香港問題に関与する法律は現在下院で承認されている。いずれ上院でも承認されるだろう。あとはトランプがサインすれば成立する。これとは別にアメリカ国内での中国の要人の動きは完全に監視するようになった。スパイ活動に監視の目を厳しくしたのだ。もし何かあれば米国内の中国留学生を全て中国に返すかも知れないと言われるほどに厳しい姿勢で臨んでいる。アメリカがこれほどまでに中国の封じ込めに国をあげて取り組んでいるのに、日本の安倍政権は「中国との関係は正常に戻った」とか「習近平を国賓としてお迎えする」とか「それも桜が咲く良い季節に」とかノーテンキな発言をしている。なんともはや、嘆かわしい。