日産の会長カルロスゴーンが逮捕された。逮捕された理由は有価証券報告書偽造という、とんでもない理由だ。こんな可笑しな理由はない。だって有価証券報告書は会社が作るものであってゴーンが作るものではないからだ。もしもゴーンが「オレの取り前を誤魔化しとけ!」と命令したにしても、その場合でもその命に従った会社の経理担当重役も罰せられるし、何よりも報告書を監査する監査法人も罰せられなければならない。それなのに逮捕されたのはゴーン会長とケリー取締役の二人だけだ。なんだかおかしい。有価証券報告書偽造だけではこんな捕まり方は絶対にない。かといって捕まえたのは東京地検の特捜部だ。犯罪者を暴く最強の秘密部隊だ。この逮捕劇の裏には何かがあるに違いない。その何かを読み解きたい。
話を分かりやすくするために、今回のゴーン逮捕劇で関係がありそうな闘争を全てあげてみてそれを土台にして解き明かしてみたい。
(関係のある確執)
1、トランプ VS マクロン
2、安倍 VS マクロン
3、レバノン VS イスラエル
4、イギリス VS フランス
5、アメリカ VS 中国
6、安倍 VS 日本産業界
以上の確執を頭に入れながら話の中に散りばめておしゃべりしてみたい。まずは、トランプとマクロンの確執だ。マクロンはグローバル主義者である。日本で言えばリベラル派である。そんなマクロンはトランプを敵視する。敵視されたトランプもマクロンが嫌いである。という話は置いといて、日産という会社の性質を先に述べておきたい。日産はリーマンショック以降立ち直ることができず経営破たんしていた。経営破たんの理由は労働組合が強すぎて会社側が何もできなかったからだ。破綻寸前の日産を救ったのはフランスのルノーだった。8000億円の援助をし、且つルノーの副社長だったゴーンを救世主として日産に送り込んできた。新しく日産の社長になったゴーンは何をしたかというと社員の首切りだ。2万人の社員の首を切った。給料のカットもした。日産はV字回復した。何もゴーンが優秀だったからではない。社員の首を切る勇気があったからだ。その勇気もフランス人が日本人の首を切るのであるから容赦がなかった。簡単にできた。過去大阪府の財政をV字回復させた橋下がいう。「余分の社員の首を切れば簡単にV字回復する」「首を切らず財政を回復するのが大変なのだ」。話がそれた。元に戻す。ルノーの会社の株式の15%をフランスの国が持っている。フランスがルノーの筆頭株主なのだ。まあ準国営会社ってことだ。そのルノーが日産の株の43%を持っている。ということは「日本の日産」ではなく「フランスの日産」の方がやや強いのだ。で、昔はルノーが日産を助けた。だが現在の日産は三菱とも連携しながら大きな利益の出る会社になった。で、現在は日産がルノーを助ける存在になっている。過去と逆転したのだ。その日産(すなわちフランス)だが、最近は中国寄りの姿勢が目立ってきていた。今年の2月、日産は中国と合弁会社を作り、中国に一兆円の投資をすると発表した。とんでもない額だ。目的は電気自動車の共同開発だ。自動車の開発には軍事的武器の開発の要素も含む。中国と経済戦争の状態にあるアメリカはフランスのこうした中国寄りの姿勢を許せない。当然にトランプから安倍総理にも話があった筈だ。トランプに言われるまでもなく、安倍は日産のこうした中国へのテコ入れに辟易していた。さて、フランスのマクロンの立場になって考えてみる。マクロンのフランス内の支持率だが最近は23%にまで落ちてきている。なんとか支持率を回復したい。それには国民の失業率の改善が重要になる。要するに国内に雇用を作ることだった。そこで考えたのが、日産自動車と三菱自動車をルノーの配下におき、フランス国内に取り込むことだった。日産と三菱をフランスに完全にとりこめば、国内に新しい工場を作って雇用を産むことができる。国民の自分への支持率も回復するだろう。マクロンはゴーンを呼んでそのことを話した。ゴーンは日産の会長であり、三菱自動車の会長であり、ルノーの会長でもあった。三社をコントロールできる立場にいた。が、ルノーの会長職はまもなく期限が来る予定だった。ルノーの筆頭株主はフランスであり、即ちマクロンである。マクロンはゴーンに言う。「もし日産と三菱をルノーの配下にするよう働いてくれれば引き続きルノーの会長職を延長する」。この話にゴーンは乗った。が、同時に日産の日本人取締役達もそのことを知った。大変だ。全てがフランスに牛耳られると日産は日本の会社としてのアイデンティティーがなくなる。なんとかしなかればならない。そこで考えたのが取締役会の評決だ。会社の決定と言うのは取締役会で決まる。日産の取締役は9人いた。そのうちの5人がフランス側であり4人が日本側であった。このままではフランスの思った通りにされる。それにはフランス側の5人の人数を減らすことだ。ゴーン会長とケリー取締役を捉まえて牢屋にぶち込めば、フランス側が3人になる。4対3で日本有利になる。で、有価証券報告書偽造という本人の罪にもなさそうな軽い罪で逮捕したのだ。
が、それだけで牢屋にぶち込めば、あちこちから批判される。事実、フランス政府から批判が来ている。が、私は思う。東京地検特捜部は次の罪状、例えば脱税、例えばマネーロンダリングなどのゴーンの他の罪をすでに掴んでいると思う。でないと、これほどに堂々とした逮捕(羽田で飛行機から降りて来る処を掴まえて連行する)という離れ業はできないだろう。いずれにしても今回のゴーン逮捕は、安倍の指示が入っていると思う。日産と三菱をフランスにとられるのは、技術の漏えいにもつながる。安倍は世耕大臣と綿密に打ち合わせながら東京地検を動かしゴーン逮捕までもっていったのではなかろうか。日産だけではない。トヨタ、ホンダ、それに、中国寄りに傾く
日本産業界への安倍からの警鐘もあったのではなかろうか。
さて、ゴーンだが、彼の父親はレバノン人である。彼自身はブラジルで生まれ、学生時代はレバノンで過ごした。そしてルノー(フランスのほぼ国営会社)の役員にまで昇りつめた。彼はレバノン、ブラジル、フランスの三つの国の国籍を持っていて、ゆくゆくはブラジルかレバノンの大統領になる夢を持っていた。しかしブラジルの大統領はすでに新人が決まってしまった。で、最近ではレバノンに食指をのばしていた。レバノンと言えばイスラエルを敵視する国だ。イスラエルをもっとも大事にするトランプにとってはレバノンに肩入れする人物は排除したいのだ。中国に肩入れをする経営体制も問題だが、ゴーンは個人的にも問題のある男なのだ。次にイギリスとフランスの関係だ。欧州における日産自動車の工場だが、その多くはイギリスにあるらしい。もし、日産がフランスの会社になった場合、イギリスの工場がフランスに移ってしまう恐れがある。で、イギリスにとっては、日産が日本の会社のままであって欲しい。だから今回のゴーン逮捕はイギリスにとって喜ばしいことなのだ。
さて、ここに書いただけで、フランス+レバノン+中国 VS イギリス+日本+アメリカ+イスラエル という対決関係が描ける。この関係に尾びれをつけると「世界戦争」の予兆が見える。
さて、今回のゴーン逮捕劇の総括だが、罪状のはっきりしないまま、世界の経済界の大物に縄をかける....なんて、安倍総理も腰が据わったものだ! が、逆に考えると、現在の世界...それほどにしなければならない難しい世界情勢にあるということだ。