あけっぴろげてあらいざらいのあるがまま



人の欲、そして国(その3;ウルグアイの場合)

日本の東の方向は、北アメリカ大陸ではありません。
地球義で日本を上にして東の方を見て下さい。
南アメリカ大陸ということが解ります。
正確に言えばラプラタ川です。
ラプラタ川の南岸はアルゼンチンでブエノスアイレスの街があります。
ラプラタ川の北岸はウルグアイでモンテビデオの街があります。
モンテビデオの街もブエノスアイレスの街も何度も行きましたが、
お互いの街から対岸が見えません。
それほど河口付近は広いのです。
ラプラタ川は、rio de la plata と書きますが、
plataは、スペイン語で「銀」です。
その河口の色はいつも泥色をしていて銀色ではありません。
何故に「銀の川」と名付けられたのか何度も聞きましたが誰も知りません。
さて、そんなラプラタ河の川岸にあるウルグアイですが...
人の欲、そして国(その3;ウルグアイの場合)_d0083068_15195891.jpg
南米は何処に行っても治安は最悪です。
その危険さはアフリカ以上です。
世界一治安の悪い大陸が南アメリカです。
ウルグアイはその中でも比較的治安が良いのですが、
私が南米に通っていたころの1990年頃は、
アパートの入り口には鉄格子がありエレベーターにも鉄格子があり、
さらに居住区の入り口はダブルロックでした(これは当たり前だけど)。
街を歩いている人に笑い顔が見えませんでした。
いつも昼だけ街に出て夜は危険なので船に閉じこもっていました。
さて、それから20年の2010年、
ウルグアイの国の指導者としてムヒカ大統領が選ばれました。
日本に来て講演をしたことがあるので知っておられると思います。
そのムヒカ大統領(写真)が今日の話の主役です。
人の欲、そして国(その3;ウルグアイの場合)_d0083068_15232087.jpg
簡単に経歴を書きます。
1935年生まれの現在まだご健在です。
2010年3月~2015年3月までウルグアイの大統領をしました。
大統領になるまでの彼の人生は壮絶でした。
ゲバラに憧れてウルグアイの極左ゲリラ組織に加入します。
6発の銃弾を受け、4度逮捕され、2回脱獄し、
1972年に逮捕された後は最長13年間収監されていました。
収監中の最初の9年間は独房に入れられ誰とも話せませんでした。
10年目にして本を読むことが許されました。
彼は自然科学の本ばかりむさぼり読んだそうです。
収監の最後の頃になると誰をも恨むことがなくなりました。
国を良くするのも悪くするのも政治が全てと思うようになりました。
出所後、自らが左派政治団体を立ち上げ下院議員選挙に出て当選します。
1934年、大統領選に出て、当選します。

彼は「世界一貧しい大統領」でした。
彼は、給料として10万円だけ受け取り残りは全て寄付しました。
農業学校を建てる資金にしたそうです。
子供はおらず奥さんと二人でこんな家に住んでいます。
奥さんは元一緒に戦った革命の闘士です。
人の欲、そして国(その3;ウルグアイの場合)_d0083068_14435721.jpg
財産は、この家と愛車である1987年製のフォルクスワーゲン一台(価格32万円)だけです。この愛車が有名になりアラブの富豪が100万ドル(1億6千万円)で買い取りを打診した時、彼はこれを売れば買ってくれた友人達(お金を出し合い買ってくれた)を傷つけることになるからとそれを拒否しました。また、海外への出張代で国のお金を使うのが勿体ないと他国の大統領専用飛行機に乗せてもらいました。写真はメキシコ大統領の専用機に乗せてもらった時のムヒカ大統領です。
人の欲、そして国(その3;ウルグアイの場合)_d0083068_14532923.jpg
このムヒカ大統領はネクタイをしていません。
彼は公務ではネクタイを締めませんでした。
ネクタイを締めることは政治家の口を締めることになり、
ネクタイは現代文明の奴隷の用具であると考えていたからです。

こんなムヒカ大統領を有名にしたのは、
ブラジルで開催された「リオ会議」.....
環境と開発を考える世界会議ですが、
その時の次のようなスピーチです。
全文を紹介します。

(ムヒカ大統領のスピーチ)

頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。午後からずっと話されていたことは持続可能な発展と世界の貧困をなくすことでした。私たちの本音は何なのでしょうか?現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか?質問をさせてください。ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持てばこの惑星はどうなるのでしょうか。息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を世界の70億~80億人の人ができるほどの原料がこの地球にあるのでしょうか?可能ですか?それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち、即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか?あるいはグローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか?どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、政治的な危機問題なのです。現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターの世界では私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれも無く政治問題ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。石器時代に戻れとは言っていません。マーケットをまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題です。昔の賢明な方々、エピクレオ、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。「貧乏なひととは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」これはこの議論にとって文化的なキーポイントだと思います。国の代表者としてリオ会議の決議や会合をそういう気持ちで参加しています。私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でないことを分かってほしいのです。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、1300万頭の世界でもっとも美味しい牛が私の国にはあります。ヤギも800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか?バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか?私の言っていることはとてもシンプルなものですよ。発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。ありがとうございました。


彼は、このスピーチでノーベル平和賞の候補にもなりました。
ウルグアイの大統領は5年一期しかできません。
任期を全うした彼は国民に惜しまれながら大統領の職を辞しました。

彼はいろいろなところで演説し持論を述べておりますが、
日本に来た時の演説で私が好きな言葉があるので紹介します。

「貧しい人は少ししかものを持っていない人ではない」
「もっともっといくらあっても満足しない人のことだ」
「大切なのは考え方だ」

この言葉は、仏教の「足るを知る」そのものです。
私がもっとも大切にしている言葉で100%共感致します。

さて、彼の演説の話に戻ります。
演説のところどころに私が赤色ゴシックにしたように、
政治が全てと言うのが彼の論調になっております。
ですが、私は彼の治政が成功したとは見ていません。
何故なら、
2012年8月のウルグアイの犯罪統計を見てみます。
(2012年ですから彼が大統領就任中です)
前年同期に比べて殺人が56.7%増えています。
強盗も5.3%増しと凶悪犯罪が増えています。
少年犯罪への処分を軽くしたので出所後の再犯罪率も高くなっています。

社会は、考え方だけでは、コントロールできません。
少ないお金で満足しろといっても人間には欲があるので従いません。
いつも周囲と比較して自分を考えるのが人間です。

人間の欲です。
個人はやはりお金です。
お金がないと他人にやさしくなんぞできません。

ひとりふたりなら考え方だけでコントロールできます。 
が、集団(国民)となると、そうはいきません。

国はやはり経済です。
経済を十分にしてあげないと治政なんぞできません。

残念ですが.....

by yosaku60 | 2018-09-24 07:07 | 時事放言 (NEW) | Comments(0)
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