全く死の恐怖の断崖に立たされたが、
頭の中ではいろいろの事が思い浮かぶ。
身は傷つき所詮死は時間の問題だろう。
このまま潔く敵の弾で斃れても良いが、
故郷に愛する妻と
未だはっきりと見覚えぬまま残して来た赤子もいる。
一同疎開先で無事であるとの便りを受け取っている。
今このままで死ぬとは!
戦争も終わり、敗れたりとはいえ、
命を全うして復員できるのに!
インドネシア独立運動の犠牲になるとは、
全く無意味で犬死に以上の何物でもない。
ここはなんとしても生きて帰るぞと決心し、
自分に言い聞かせ念じた。
敵匪の襲撃は留置場ごとに行われ、
その都度悪魔の銃声が響いた。
その内辺りは暗闇となり、
敵匪の作業は終わり、
大殺戮事件が行われた刑務所は
何事もなかったように静かになった。
気が落ち着いてくるにつけ、
インドネシア人の我々に対する鬼畜行為には
大いなる憤懣が湧いて来た。
我々はインドネシアの独立を助長こそすれ妨害した覚えはなく、
またする必要もないのに、何故恨まれなければならないのか。
彼らに我々の心情を知らせんものと、
流れている血潮を指先につけ部屋の白壁に
「パギャン インドネシア ムルデカ
(インドネシアの独立を祈る、万歳)」と書くものもいた。
「天皇陛下万歳」とか、
「自分の名や家族の名」を書く者もいた。
遠くから銃声が聞こえて来た。
息のある者もシーンとしている。
日本軍が我々の救出に動きだしたと祈っていた。
しばらくして、また敵匪が現れた。
室内の様子をうかがっている。
少しでも動いているものを発見するや狙い撃ちである。
申し訳ないと思いながらもそっと友の亡き骸を引きよせる。
賊はなおも弾を撃ち込んでくる。
息をこらし生きた心地がしない。
「助かりたい」の一念で友の死体を抱えていることを一晩中、
気に留めながらも、いつしか眠った様だ。
その内殺気と幽鬼が一杯立ち込めていた部屋にも
夜明けの光が見えて来た。
全く長い夜であった。
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