エヴィが話してくれたのをそのまま書きます。
おばあちゃんが死んでしまいました。
おばあちゃんは、天国の夫に早く会いたいと言っていました。
だから、良かったのかも知れません。
おばあちゃんが一番可愛がっていた子供は、私のお父さんでした。
その私のお父さんも、「良かったかも」と言っています。
おばあちゃんが、天国に行きます。
どういう手続き(葬式)で天国に行きたいのか、
天国には、どういうものを持って行きたいのか、
それを確かめるために、バリアンの処に行くことにしました。
私の家は、王家なので、有名です。
デンパサールのバリアンに行っても、私たちを知っているかも知れません。
私たちのことを知らない、遠くの地のバリアンを訊ねることにしました。
その地に、ヌガラを選びました。
ヌガラはとても遠い処です。
誰も私たちのことを知りません。
で、ヌガラのバリアンを訊ねることにしたのです。
一族、15名がヌガラに行きました。
勿論、自分たちの名前は言わないし、
デンパサールから来たことも明かしていませんでした。
バリアンは、中年の女性でした。
祈るうちに、おばあちゃんが乗り移ってきました。
言葉遣いも声までも、おばあちゃん、そっくりでした。
(エヴィのおばあちゃん)

びっくりしたのが、私のお父さんを生前におばあちゃんが
呼んでいる名前で呼んだことです。
「....さん、そんなに遠くにいないで、私の横に来なさい」
と言ったのです。
そのひとことで、これは本物だと思いました。
おばあちゃんは、続いていいました。
「気になっていることがあります」
「私の右腰の上が汚くなっています」
「このままでは恥ずかしいです」
「そこをきれいにしてください」
おばあちゃんの右腰の上には、床ずれの傷がありました。
そのことを知っているのは、ほんの数人でした。
おばあちゃんが世間話を始めました。
「今、ここに、パパ(亭主)もいます」
「パパは、何度も迎えに来てくれました」
「でも、まだ早いといって、すぐに帰ってしまったのです」
「でも、今ようやく、ずーと私の傍にいます」
「私は、幸せです」
その後、おばあちゃんは、葬式の要望を話し出しました。
「私の葬式は、セセタンでしてください」
びっくりしました。
だって、バリアンは、私たちがデンパサールから来たことも
知らないし、ましては、セセタンがどこかも知らない筈です。
セセタンは、おばあさんが生まれた土地です。
昔、おばあちゃんが娘時代に住んでいた家は、今は、バイク
修理工場になっていて、エヴィのお父さんが管理しています。
修理工場があるだけで、そこには住んでいません。
住んでいた王宮で葬式をあげるのは簡単です。
でも、住んでいないところのバンジャールにお願いして葬式
をするのは、大変なんです。
でも、おばあちゃんの望み通りの葬式にしました。
次いで、おばあちゃんは、そこに居た15名それぞれに、
それぞれの名を呼び、それぞれ違った要求をしました。
エヴィには、
「グン(おばあちゃんだけが呼ぶエヴィの呼び名です)!」
「あなたは、香水を買ってきて、私の傍に置きなさい」
おばあちゃんの闘病中、エヴィは、部屋に変な臭いがしない
ようにいつも香水をまいていたそうです。
おばあちゃんは、それをうれしく思っていたようです。
私は、香水を買ってきて、おばあちゃんの棺に入れました。
おばあちゃんは、エヴィのお母さんに言いました。
「私は、今腹が空いています」
「なにか食べたいのです」
闘病中、おばあちゃんに食べさすのが、エヴィのお母さんの
役目でした。
でも、死の間際、エヴィのお母さんは、あわてていて、
食べさすのを忘れていたのです。
そのことを指摘されたようで、おかあさんは恐縮していました。
おばあちゃんは、エヴィのお父さんに言いました。
「あなたは、お金を準備して、持ってきなさい」
「向こうに行ったら、いろいろな人にお金をあげたいと思います」
生前、おばあちゃんにお小遣いを持って行くのが、
私の父の役目だったのです。
おばあちゃんは、それを感謝し、もういちどお願いしてきたのでしょう。
......
これが、エヴィが私にしてくれた話です。
こうした摩訶不思議な話、
バリ人は、当たり前というのですから、
これぞ、バリ!
だから、バリ! と思わざるを得ません。