だが…….
10mも入ると、急な坂が待っていた。
車は滑り台を滑るがごとく、落ちるのみ….
落ち葉に隠れて見えないが、
道路には大石小石ががらがらにあるようだ。
ブレーキを踏みながら、
ハンドルを取られないようにするのが、精一杯。
瞬く間に、谷底に着いた。
が、川なんぞない。
橋なんぞない。
勿論、お墓なんぞない。
降りたと思ったら、
すぐに急こう配の登る道になっているだけ。
しかも、車一台がやっと通れるだけの細い道。
車を制御するのが精いっぱいのオレ。
格闘する中、瞬間的に思う。
お墓は、きっとこの坂を登り、
そして、降りたところなのだろう。
そこに川があって、橋があるのだろう。
だって、あのお爺ちゃん、
坂がいくつある、とは言わなかった。
そう思い、車を止めないで、そのまま坂を登ることにした。
ゆっくり登ると、登り切れない。
クランディスの山道で経験済みだ。
ギアーをローに入れ、急坂を一気に登った。
途中で急坂が、いくらか緩やかになった。
そこに一軒の家があった。
お墓の場所を聞くために、
エヴィに車を降りてもらった。
家に入り、聞き込んだエヴィが言う。
「お墓を通り過ぎてしまったそうです」
教えてくれたのが、右の人。
どこ? とエヴィに聞くと、
「よくわからない」
「だけど、車で行けないところ」
「この奥さんが案内してくれるので、一緒に行く」と言う。
そうか、通り過ぎてしまったのか。
そんなのなかったけどな~
まあ、いい。
が、と言うことは、車を反転しなければならない。
この細い道で、車をどう反転させるか。
墓探しは、エヴィに任せ、オレはそれに専念した。
車の前後を草木にぶつけながら、
何度も切り替えしを行う。
タイヤが滑ってうまく切り返せない。
摩擦でタイヤが焼けて、焦げ臭い。
ええい、かまうもんか….
で、とうとう反転に成功した。
急いで車を降り、徒歩で坂を下りエヴィが消えた方に向かった。
こんなところである。
見た通り、なーんにもない……
と、思い、林の中を進むと、
エヴィの後ろ姿が見えて来た。
前に進むのが不安そうなエヴィ…
幽霊やお化けが怖い、バリの女の娘(こ)だ。
そのエヴィの進む方に、お墓らしいのが見える!