オダラン最後の日は、
バンジャール(村落共同体)の寺でバロン劇がある。
百獣の王である、聖獣バロンは、村の守り神だ。
このバロンが演ずる劇をバロン劇といい、物語の大筋が決まっている。
簡単に言えば、悪魔とバロンとの戦いである。
が、外国人である私にとっては、登場人物(?)が多く、物語の全体が良くわからない。
観光客に見せるバロン劇は、一時間ほどの短縮した物語に変え、最後は兵士が悪魔の魔力によって呪いがかかり、自らの身体に刃を刺して終わる。
だが、バンジャールのバロン劇は見世物ではないので、物語を短縮したりしない。
延々と物語が続く。
そのうちに神が乗り移った観客がトランスに入る。
トランスは伝染する。 トランスに入る人が少しづつ増える。
そして、あるとき、一気に5.6人がトランスに入る。
それを介護する人々が全員立ち上がり、男どもの統制が乱れる。
それで、物語は中止されてしまう。
昨晩は、バロンを演ずる男もトランスに入り、交代のために他の者がバロンの中に入ろうとするが、どうしても入れなかった。 ガムランはそういう現状を理解しながら淡々と演奏され、あるときは劇の進行をリードしているようでもあった。
バンジャールの本物のバロン劇を見るのが、今回で2回目、
いつになったら、全体像を理解できるようになるのだろう。
大筋の物語が決まっている。
が、当日の進行は誰もが予測できないのだから。
写真は、多くの男がトランスに入り、
バロン劇が終焉したときのカミさん。
こんなとき、わらっちゃいけないよ!