村内に盛大なウバチャラがあった。
ウバチャラとは祭り事という意味である。
あったのは、「ポトンギギ」。
ポトンとは、「切る」ということ、ギギは「歯」であるから、要するに歯を切る祭り事ということになる。 歯を切るって、残酷なようであるが、そうでもない。
バリ人の多くは男女を問わず、歯がきれいである。
特に歯並びが良い。 犬歯がとがっていない。 ポトンギギで切りそろえるからである。
バリ人にとって、犬歯は獣性を表すといって嫌われる。 成人になると、犬歯の先を平らになるまで鑢で削り取られるのだ。
それがポトンギギの儀式である。
削る歯は、犬歯だけではない、上の歯の出ているところを合計で6本削る。
情欲・貧り・憤り・放逸・痴・嫉妬の六敵を制するための6本とのことだ。
17歳未満はポトンギギをできない。
おおよそ20歳ぐらいですることになるらしい。
何故に年齢が決まっていないのかは、よく理解できないが、ポトンギギの儀式を行うには、相当の費用がかかるらしく、お金がそう簡単に貯まらないといった事情があるようである。
写真は、この日、ポトンギギを行う3人の若者(向かって左から二人目を除く)である。
若者は誇らしげであり、その両親はポトンギギを子供にできる幸せを思い、感激で目を潤ませる。
女性は全員が着飾って華やかである。
ガムランが鳴り、来場者にはご馳走が配られる。
隣に居た参列者に聞いてみた。
「あんた、ポトンギギ終わったの」
「終わったさ」
「痛くなかったかい」
「それは痛いさ、昔、オレの時代は痛かったさ。
でも今は技術が進歩して痛くないよ」
古来の儀式にも技術の進歩があることに少々戸惑う。