あけっぴろげてあらいざらいのあるがまま



柳川宗成物語(その10; 教育カリキュラム)

そんな青年道場の教育内容だが、
柳川は、陸軍中野学校で自分が学んだことを中心に次のように組み立てた。

一、学科
(イ)精神教育(精神訓話)
(ロ)世界事情(和蘭東印度史)
(ハ)軍事学(軍隊内務、戦史、戦術、作戦、築城、交通通信)
(二)語学(日本語)

二、特殊教育
  諜報、宣伝、謀略、防諜、統計

三、実科
  教練、体操、相撲、水泳、銃剣術

四、術科
  射撃、偵察、連絡、潜行、潜在、破壊、殺傷

五、演習、見学

六、課外
  軍歌演習、軍歌解説、号令調整、その他一般常識

柳川は、青年たちの体力と精神との両面の向上に苦心した。
なぜなら、青年たちの最初の平均体重は四六・九キロだったからだ。
強い精神は、強い身体に宿る。
柳川は、まずは体力の増強に取り組んだ。
その手段に選んだのは、相撲だった。
土俵を作りさえすれば、あとは褌一本あれば良い。
それが相撲を選んだ理由だ。

幸いにも近くに元プロがいた。
別班本部で炊事係りをしていた戦前派の米山老人である。
齢こそ六十才だが、元十両の力士だった。
彼に泊まりこみで指導してもらい立派な土俵ができた。
相撲の指導は、押し相撲一点張りとした。

最初の内は「ズボン」でとっていたが、被服の破損が激しかった。
被服交換の日本人担当から苦情も出た。
そこで軍を介して帆布を手に入れ、それを切って褌を作った。
土俵と褌がそろい、相撲は本格的になった。
行司の教官の「用意」の号令で俵に足を突っ張り構える。

「始め」で突進する。
一直線に相手につき進む。
後退とか横に飛ぶことは許さない。
うっちゃりも絶対に許さない。
前進、ただ前進のみである。
最初は、なかなかうまくいかなかった。
どちらかが、怖れるか、遅れるからだ。
ちょっとでも立ち遅れると、構えたまま後ろにつき飛ばされる。
立ち会いに気合負けする者は残し、何度でもやらせる。
苦しまぎれにうっちゃりをやった者は負けである。
押し合い、突っ張りが合いが永くなると「止め」の号令で中止。
改めてやらせる。

顔面青黒くなり、眼は必至の力を表し、ふらふらしながらも激突する。

「相手をオランダと思え、敵と思え」
「お前がいかねば、敵が来るぞ」

互いに心気伯仲すれば、土俵の中央で頭と頭、額と額がガッと衝突する。
両者ともにひっくり返る。
時々、両者とも、額に刃物で切ったような傷ができる。
ヨーチンをつけ繃帯をして、またすぐ始めさせる。
恐怖と苦痛で青黒くなった顔に目を血走らせて相撃つ肉弾戦は鬼気迫るほどになった。

柳川自身も土俵の鬼になった。
五十名ひとりひとりを入れ替わり立ち替わり突き飛ばした。
当初は全く赤子を扱うような有様であった。
その彼らのへっぴり腰が二十日もすると、腰もすわった。
必死の眼光に青光りする鋭気を加えて、見違えるほどになった。

by yosaku60 | 2017-04-17 07:28 | インドネシア独立戦争 | Comments(0)
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