(10) マナウス港 出港準備
10月28日(日曜日)16時頃荷役終了が見込まれたため、
パイロット乗船17時00分として出港準備をアレンジした。
事実15時20分に荷役終了し、16時30分にカーゴのラッシングも終了した。
本来ならば予定通り17時に出港できた筈であるが、
密航者の2回目の逃亡があったため出港が遅れることとなった。
.........(17時間のDEMURRAGEの経費発生)
.........(岸壁使用代などの港費1日分発生)
(11) マナウス港 2回目の逃亡
10月28日 船長は昼食を食べに上陸した間であった。
密航者が逃げてから15分後に
船長帰ってくる。
12時30分 密航者の部屋から音が聞こえる。
ドアーを壊している音である。
乗組員約10名
ドアーの前に集まる。
一航士、ポリスを呼びに行かせる。
なかなかポリスが来ない。
内側からドアーの破壊が続く。
ドアーが破壊される。
ワッチマンの持っているナイフは刃渡り10センチ、短くてか細い。
ロッカーを壊した木材を振り回し暴れる。
フイリピンクルー怖くて一瞬逃げる。
リオンその隙を狙ってペドロに”走れ”と怒鳴りながら逃げる。
そのままデッキに出る。
.........(経費として居住区内備品 ドアー破損修理費発生)
なぜこの時アッパーデッキの通路が開いていたか疑問である。
しかし後程ブィラデコンデ港で逆に人夫に侵入され分かった。
本船は居住区回りの施錠を全くやっていないのである。
今回は日本で私と
2/MATEのみの交替で、他は全員南米航路を経験している。
前船
プリメラピーク同様全ての施錠が当たり前に実施されているものと思い込んでいた。
これは私のミスであった。
デッキに出ると乗組員が追っかけて来る。
棒を振り回すと
乗組員また逃げる。
その隙を見てNO.1艙の横から川に飛び込む。
川に飛び込むもペドロ逃げる気なし。
泳いでいるところを上から物を投げられると、手を挙げ降参。
桟橋の待つポリスのところに自分で泳ぎ着く。
一方のリオン、少し泳いで潜ったと思ったらもう浮いてこない。
この後約12時間、リオンの捜索が続くこととなる。
...........
(解説)
船長帰って来る;
逃げた後、15分して私が帰って来た。
私は彼らが逃げた時、船にいなかった。
ドアーの前に集まる;
なぜにドアーが壊されるのを見ていて、それを止めれなかったのか。
乗組員を怒りつけたかったが、あとで言ってもしようがない。
それほど怖かったのだろう。
私は、黙って我慢した。
一航士;
一等航海士のこと。
船長がいない場合、一等航海士が船長の代わりを務める。
この時の一等航海士は日本人だった。
やわな男ではなかった。
気の強い、統率力のある男だった。
信頼をおいていた。
彼にしても、この場を抑えきれなかったということだった。
2/MATE;
二等航海士。
プリメラピーク;
その頃、商船三井には、
プリメラピーク、アストラピーク、グロリアピークと「ピーク型」が3隻いた。
ピーク型の構造は、3隻とも同じである。
私は、前年にプリメラピークの船長を経験していた。