あけっぴろげてあらいざらいのあるがまま



アンボン島(歴史その3;宗教紛争)

今度のアンボン行きは、
レストラン「ムティアラ」の森崎さんとご一緒した。
というより森崎さんに全て案内されてのアンボン旅行でした。

森崎さんは、10年間のアンボン居住を体験している。
アンボンの隅から隅まで知っている。
そんな森崎さんがアンボンを去る原因になったのがアンボンの宗教紛争。
森崎さん曰く「アンボン動乱」だ。

結果、日本企業のほとんどがアンボンから撤退した。
相当に大きな影響があった動乱だ。

その顛末を船戸与一が「降臨の群れ」という本で発表している。
私も読んでみた。
が、無理にロンボック・マジックにひっかけてみたりして違和感が多い。
筋書きにこじつけが多いのだ。
動乱の最中にアンボンにいた森崎さんに言わせると、事実と異なるという。
で、ここからは、森崎さんから聞いた話を中心にアンボン動乱を語りたい。

アンボン動乱....
1999年1月19日、ラマダン明けの祝日に、
キリスト教信者とイスラム教信者とが争い始めたことを言う。

何故に、こんな戦いが始まったのか?
通常どこにでも起きうる小さな喧嘩がだんだんと大きくなって、
という説が有力であるが、軍が関与して起こしたとの説もあったり、
アルー諸島のドボで起こった争乱がアンボンに波及したとの説もある。
要するに、動乱の原因は、今も定かではない。


その昔、交易と共にやって来たのは、イスラム教であった。
が、その後に来たヨッロッパ人は、
雇用や生活の保障と引き換えにキリスト教への改宗を求めた。
途中での改宗なので、
兄弟や親類がクリスチャンとモスリムを分けることもあったらしい。
で、動乱が始まった頃のアンボンは、
クリスチャンとモスリムの人口比率は半々だったらしく、
同じ部落に、クリスチャンとモスリムが雑多に暮らしていた。

それが両者の戦いが始まった。
クリスチャンが多く、モスリムが少ない処のモスリムは、
モスリムの多い地区に引っ越した。
モスリムが多く、クリスチャンが少ない処のクリスチャンは。
クリスチャンの多い地区に引っ越した。
結果、モスリム地区とクリスチャン地区は完全に分かれた。
しかも、
クリスチャンの地区とモスリムの地区が交互に縞模様に在るのだ。
ということは、道路を走ると、
クリスチャンの地区を通りすぎると、モスリムの地区に入り、
そのモスリムの地区を通りすぎると、次のクリスチャンの地区に入る。
ということになる。

ここで、森崎さんの証言に移ろう。

その1....

背後で、ドンパチ、鉄砲の弾が飛び交う中、ワルンのおばちゃん、
平気で店を開いてるんだから、すごい。

その2....

自分は、すばやく通り抜けれたけど、同僚が流れ弾に当たってね~
「で、どうしたの」
本人をシンガポールの病院に運んだけどね。

その3....

マカッサルの日本領事館から、依頼があってね。
アンボンの端の方に住んでいる日本女性を助けてあげてくれって言うのよ。
夫がアンボン人で子供と一緒に夫の実家にいるんだそうな。
そこはイスラム地区とモスリム地区を交互に何度も通らなければ行けない。
だから、危険だからって断ったんだけど...
本人から領事館に救助要請が来ている。
是非に助けに行って欲しい.....と何度も頼まれてね。
結局は引き受けたんだけどね。
「ええ、! どうして行けたの」
キリシタン側の兵士とモスリム側の兵士を両方雇ってね。
彼らを車に乗せ、窓からは機関銃の銃口を出し、
車の前に日本国旗を揚げてね、
ノンストップで地区地区を突っ走ったんだ。

その4....

道路が分断されたと一緒でしょ、
昔の知り合いから、食料補給を頼まれるんだ。
それが、モスリムだったり、クリスチャンだったり、
両方から頼まれるから、大変だったよ。
でも、喜ばれたけどね。

その5....

でも、いつもうまく行くとは限らないんだ。
ある時、イスラム地区を通った時、銃を持つ者に車を止められたんだ。
無法化しているから、誰を殺そうが勝手な雰囲気でね。
その時その男は、今にも殺すような、ものすごい目をしていてね。
もう、気が狂っているような目で、今でもよーく覚えているけど。
で、あわやというその時、私の車の助手席にいた女性がね。
「私たち、モスリム、ご苦労様」と、咄嗟に言ってね。
その男も我に返ったようになって、無事に通れたんだ。

その命の恩人が、この人....
てんで、森崎さんに紹介されたのが、このご婦人(写真)。
11年ぶりの再会だそうです。
アンボン島(歴史その3;宗教紛争)_d0083068_12381090.jpg

その6....

町のあちこちの家が燃やされ、
モスクが燃やされ、教会も燃やされた。
壊され焼かれ、再建されずに残る昔の教会跡(写真)。
アンボン島(歴史その3;宗教紛争)_d0083068_12393044.jpg

さて、臨場感をもって、アンボン動乱をお分かりいただけましたか。
死者5千人の、この動乱、
兄弟姉妹の殺し合いもあって根が深かったのでしょうか。
くすぶり続けながら、3年続いたそうです。
んで、根の深さが国際的にも問題になって、
もうこういう争いは2度と起こさないにしようと、世界に誓ったのです。
その誓いのモニュメント(写真)が町の中心の公園にあります。
除幕式には、世界から人が集まったそうです。
アンボン島(歴史その3;宗教紛争)_d0083068_12411124.jpg

が、オレ、まだ、少し、くすぶる気配があるように見受けんだけど....
アンボン島...........平和な島になって欲しい。
by yosaku60 | 2016-05-01 12:35 | マルク諸島 | Comments(0)
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