12、アカパ湾:「・・・・」
....としたのは、与作が行ったことがないからです。
紅海の途中から右に入る細く長い海域です。
そのアカパ湾の奥にアカパという港町があります。
アカパに入港した経験のある船乗りから聞いた話ですが、
アカパの町には、ヨルダン、イスラエル、エジプトの
三つの国が入っており、
町の中に国境線が二つあるとのことです。
なるほど、地図で見るとそうなっています。
ちょっとあやしい奇妙な町、アカパ・・・、
行ってみたい港の一つでしたが、
機会がありませんでした。
13、スエズ運河:「マールボロ」
マールボロは煙草の銘柄です。
どの船の船長もスエズ運河を通るときは、
ある程度の煙草を準備します。
運河航行中に船に乗ってくるいろいろな人に土産として、
あげる接待用としてです。
いろいろな人とは、
パイロット、官憲、ボートマンなどですが、
合計10人ほどです。
こちらが機嫌が良いときには、
1カートン(10箱)の封を切らずにそっくり
渡すこともありますが、
うるさいことを言うと、一箱しかやりません。
そうすると、「ケチ」と言われて喧嘩になります。
しばらく争ったあと、3箱ぐらい上げることになります。
要求どおりに煙草のお土産を持たすと、
免税品で安いとは言っても金額がかさみます。
貰ったタバコは、
彼等はそれを市場で売りさばくので,
結構な収入になるのです。
ここで可笑しい事に、
煙草は「マールボロ」でなくては、ならないことです。
他の銘柄は受け取らなくはないのですが、
機嫌を悪くします。
煙草といえば、カナダやスカンジナビアは、
とっても値段が高い(確か一箱500円ぐらい)筈です。
与作は煙草を吸わないので値段を知らない。
それに比べ、船では無税なので、
日本の煙草も外国の煙草もほとんどが一箱70円程度で、
仕入れる事ができるので、タバコをお土産に渡しても、
実際にはそれほどの負担にはなりません。
単に彼等の要求どおりにお土産を渡すのが腹立たしいので、
争そうだけです。
スエズ運河は一方通行です。
北航船がある時は、南航船は待機します。
南航船がある時は、北航船は待機します。
それぞれが集団で航行します。
その集団をコンボイと言います。
北航にしても南航にしても途中で必ず待機があるので、
通行には、朝から夜までの丸1日かかります。
世界の三大運河といえば、
スエズ運河、パナマ運河、キール運河です。
これらの運河は 「港の臭い」で、
詳しく語ることを考えているので、
ここではこれだけにの記述にしておきます。
世界のどんな船長に聞いても、
「スエズ運河=マールボロ」と言えば、
ニヤリと笑うでしょう。
それほどの強いイメージです。
14、地中海:「砂嵐」
地中海を頭においても、実は何もイメージが湧きません。
北は南ヨーロッパ、南は北アフリカなので、
それから受けるイメージが強すぎて、
地中海としてのまとまりのあるイメージが湧いてきません。
で、船乗りにとって時々話題になる、
「地中海の砂嵐」を取り上げてみました。
船乗りであれば少しは納得してくれそうなイメージです。
砂嵐にはそれほど出会うわけではありません。
与作は船乗り時代を通して、
15回程度は地中海を航行しておりますが、
運が良いのか、遭遇したのは1度だけです。
砂嵐はリビア沖が多いと聞きますが、
与作が出会ったのはアルジェリア沖でした。
砂嵐といっても砂が風に舞うというイメージではありません。
空気が茶色になって、前が見えなくなるのです。
それほどに細かく吹けば飛ぶような砂なのです。
ですから、舞いあがった砂漠の砂は、
上空高く舞いあがり、漂い、
時にはヨーロッパにまでゆくのだそうです。
ただ、ヨーロッパの空まで曇らす砂嵐は、
数が少ないのではないでしょうか。
多くは地中海をくらーく覆うことになるので、
その発生頻度から「地中海の砂嵐」が、
船乗り間で有名なのだと思います。
前が見えなくなりますが、
レーダーの電波を遮蔽するほどではないので、
注意しながら安全航行を確保できます。
が、レーダーのない昔の船は、
砂嵐に苦労したことが想像できます。